令和4年度第1回地方創生ネットワーク会議 「地域の未来をデザインするには」を開催しました

更新日 2022.07.28

地域創生本部では、今年度の地方創生ネットワーク会議の年間テーマを「2050年の青森県をデザインする」とし、第1回は「地域の未来をデザインするには」をサブテーマとして、令和4年7月13日に開催しました。

基調講演では、近年着目されている未来社会のデザイン手法「フューチャー・デザイン」(以下「FD」)の主唱者である、高知工科大学特任教授・西條辰義先生をお招きし、FDの基本的な考え方についてご解説いただきました。西條教授によれば「科学」や「市場」、「民主制」といった現在の基本的な社会の仕組みには、環境問題等、将来への負の影響(「将来失敗」)を生み出してしまう潜在的なデメリットがあるといいます。しかし、人間には目先の利益だけでなく、将来の世代の利益を考える能力(将来可能性)が本来備わっていることも指摘されています。こうした点を踏まえると、現在の視点からの議論ではなく、未来人になりきって議論するFDのあり方は、人間が有する将来可能性を発揮させ、さらには地域の未来にとって独創的で楽しいアイデアを創出するために極めて有効な手法であるということでした。

パネル報告では、まず青森県側から、小さな町村の多様性(「イバるところ」)を活かすことを目指し、1990年代後半から大間町において様々なまちおこし活動を続けつつ、近年は海洋資源の持続性の問題に食育の切り口から取り組んでいるYプロジェクト・代表取締役の島康子氏と、毎年ひとつの街が消えていくほどのスピードで人口減少が進む青森県において、従来の「金融サービス」の範囲にとらわれない地域や企業とのリレーションづくりやサービス提供に取り組む、あおもり創生パートナーズ株式会社地域デザイン部長・福士暁氏の2名からご報告をいただきました。

また、実際に北東北においてFDを行政に取り入れている事例として、岩手県矢巾町企画財政課課長補佐・高橋雅明氏から、水道事業の将来検討に始まり、総合計画策定や新規政策立案など、全庁的にFDを活用するに至った矢巾町の取り組み経緯についてご報告いただきました。

 

 講師・パネリスト:西條 氏(左)、島 氏(右)
講師・パネリスト:西條 氏(左)、島 氏(右)
講師・パネリスト:福士 氏(左)、高橋 氏(右)
講師・パネリスト:福士 氏(左)、高橋 氏(右)

 

基調講演と3つの報告の後、本学人文社会科学部・森樹男教授がモデレーターとして加わり、ディスカッションを行いました。

まず福士氏からは、FDの考え方に非常に刺激を受け、共感しつつも、コロナ禍など直近の切実な経営課題を抱える民間企業に対して、どのようにしてFDを紹介し、理解してもらえば良いのか、という問いかけがありました。これに対して西條教授からは、民間企業においても実際にFDを試してみたところ、経営者や参加者たちが20~30年先の人びとの「幸せ」を見据えた刺激的な議論をすることができたという返答がありました。

また島氏からは、FDにおいて必要とされる「未来人」の視点をどのように獲得し、またどのようにその視点を維持し続けることができるのか、質問がありました。これに対して高橋氏からは、いきなりすべての参加者が未来人になりきれるわけではないが、グループワークの中で少しずつ未来人になりきる人が出てくれば、徐々に周囲も触発されて未来人の視点で考えるようになり、その後の日常生活でもワークショップで得た気づきや学びを意識することで、未来人としての視点を持続していくことができるのではないか、という返答がありました。

参加者からは、FDの行政現場での活用を見据えた具体的な質問が複数みられるなど、活発な議論がなされました。
FDについて、さらにお知りになりたい方は、当日西條教授から情報共有いただいた以下の資料をご覧ください。

西條辰義「フューチャー・デザイン 持続可能な自然と社会を将来世代に引き継ぐために」(一般社団法人地方行財政調査会講演シリーズ 第132号)
https://www.chikyu.ac.jp/rihn/publicity/detail/23/

 パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

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