教育学部 音楽教育講座 今田匡彦先生に聞く
グローバルマインド【ルーブリックより】
- 異なる価値観をもつ人と積極的に関わり、共生・協働できる
1.中心・周辺図式の問題
———グローバルマインドという概念が、文字取り「グローバルな舞台で活躍するための心の持ちかた」を意味するということは分かります。しかし、具体的にどういう心の持ちかたなのか、なかなか掴みどころがないように思われます。
今田:学生がグローバルマインドを身につけるにあたって、まず一番最初に認識してほしいことがあります。それは「中心・周辺図式」を持たないということです。
中心・周辺図式とは、例えば西洋社会を中心と捉えて、日本を極東と捉えるような考え方です。他にも、東京を中心として、弘前を周辺としてしまうような考え方も、中心・周辺図式の一つの現れ方です。
中心・周辺図式は、現実の複雑性や価値の多様性を受け入れることの邪魔になります。例えば、ある弘大生が中心・周辺図式にしたがって、ニューヨークあたりに留学したとします。今この学生の心の中には「世界の中心ニューヨーク」という思い込みが刷り込まれています。学生は自らの思い込みにしたがって、ニューヨークで出会った大学教員・学生たちを賞賛することでしょう。更には、留学後に弘前に帰ってきて、「弘前はのんびりしていてダメだ」などと考えるかも知れない。しかしニューヨークにものんびりした人はいるわけだし、弘前の地で世界に伍して研究を進めている人もいるわけです。これは中心・周辺図式にしたがって、現実を真摯に見つめることに失敗した例です。
複雑な現実や多様な価値をしっかりと見つめ、省察し、自分自身の世界観、価値観を築きあげる。これがグローバルマインドを養うための第一歩です。中心・周辺図式はこの第一歩を妨げるものであり、注意が必要です。
2.英語のスタイルを築き上げる
———グローバルマインドの涵養には英語力の問題がついてまわりますが、この点についてはどのようにお考えですか。
今田:英語力向上にはキリがありません。基本的には、必要なときに必要なだけ英語を使えれば、それで良いと思います。
私からのアドバイスとしては、自分好みの英語のスタイルを見つけて、そのスタイルを身につけるように努力するという練習方法を進めたいです。
私はカナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学で学位を取得しましたが、その時には英語のスタイルにこだわって英語を勉強していました。憧れのスポーツ選手を見つけて、その選手のプレイスタイルを真似するように、憧れの英語ライター・英語スピーカーを見つけて、そのスタイルを真似するイメージです。漫然と正しい(とされる)英語を学ぶより、自分の好きなスタイルを身につける方が勉強していて楽しいものです。
そういえば、英語のスタイルにこだわるクセは未だも残っていますね。たとえば「今度のロンドンでの国際学会では、イングランド風のクイーンズイングリッシュのスタイルで話すようにしよう。そのために早いうちからBBCを見て耳を慣らしておこう」なんてことをやったりします。学生にも、遊び心をもって、英語を練習して欲しいです。
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